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絶望の未来編…救いはないんですか!?
1の方で娘を助けるためにまじで焦りました。<ネタバレ>マイユニ娘ノワールの「父さんがこんなに凄い軍師なのに娘失格だわ…!」みたいなセリフでああもうそんな事言わないで元気出してもう…もう…! てなりました。ノワールは光マスでたまに喋るサーリャちゃんとの別れ方もきっついのでね…もっと幸せになってもいいのよ…。</ネタバレ>
そんで2の方でガチ泣きしています。<ネタバレ>吊り橋を落としたアズールに初っ端からぼろ泣き。ブレディちゃんは戦えるかと思いきやウードが「武器持ってなかったよな…」つってたのでどうしたんだと思いましたが、「ここに来るまでに杖も武器も全部使い果たしたんじゃないか」説を見て(つд`)Oh…。</ネタバレ>リズとウードの会話(´;ω;`)ウウウ…
そして両方とも<超ネタバレ>敵将がマークって…ああ…あああ…! マイユニとの会話はかなりこたえます。ギムレー化したマイユニも昔は優しくて軍師の才能がある一番大好きなお母さんだったからマークはついていったんですね…。</救いはないね!>誰も救われない世界線なのか…。

10の月10の日がロンクーちゃんの誕生日なので色々とやってました。ページ作れるまで追記に置いておきます。ほんのりどころではないグレロン風味です。

「お前、誕生日なんだってな!」

満天の星が、夜空を埋め尽くしていた。
ロンクーが手にしている刀は、かがり火の橙色を写し静かに輝いている。夜営の見回り当番を終えたが、彼はその後朝まで仮眠を取ることなく、野営地の端を陣取って剣を振るっていた。
夢見の悪さは、ロンクー自身辟易している。幼い頃の記憶を繰り返す、夢。天幕の中で眠る生活になってから、一層悪化したような気がした。眠らない方がよっぽどましだ、という結論に辿り着くまで、それほど時間はかからなかった。さすがに体調を害する前に休んではいるが、それでも。
見回りを終えた後、こうして一人で鍛錬をするのは彼の習慣だった。たまに早起きをしすぎたフレデリクや、見回り帰りのヴェイクが様子を見に来ることもあるが、基本的に夜は一人で過ごしていた。
剣を手にしていれば、己の精神だけに集中できる。――眠った時のように、悪夢に魘されずに済む。
今日もこうして、眠らない夜を彼は一人で過ごすはずだった。
はずだったが。
ひゅっと空気を切りかけた音が、先程の能天気とも何ともとれない声にかき消された。
「……は?」
名前を呼びかけられたのと、呼びかけられた内容に剣が思わず止まり、ロンクーは声の主――グレゴの方に顔を向けた。

草むらを下りてくる足音に、どこか機嫌が良さそうな様子が聞こえる。
剣の構えをぎこちなく解いている間に、グレゴの足はロンクーの前で止まった。
「何の話だ」
「何ってお前、言った通りよ」
ようやく剣を下ろしてロンクーが真意を問おうとしたが、グレゴの言葉に先程言った以上の意味は無かった。そういえば、自分の後の見回り当番はこの男だった、とロンクーはぼんやりと思い出した。こんなところで油を売っていてもいいのだろうか、それともすでにやることは終えているのか。
「誕生日、おめでとさん」
つらつらと一人で考え始めたところへ、唐突な祝いの言葉。
彼の方へ向き直ろうとしていたロンクーの身体は、またしても固まった。
「まだ夜明け前だから、たぶん一番乗りかー?」
グレゴが空を見上げると、半分以上を欠いた月が東の空に残っている。
星が綺麗だな、とグレゴが感嘆の声を上げた。
この日の夜営は山にほど近く、空気が澄んでいるためいつも以上に星の数が多い。
とすり、と刀の切っ先が地面に落ちる音が聞こえた。
「……そうか」
祝いの言葉をかけられたロンクーは、予想以上に薄い反応しか返さなかった。
僅かな時間、二人の間に沈黙が横たわった。グレゴは黙ったまま、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「……」
「それだけ?」
「何がだ」
またしても、非常にそっけない返事。まるで、答える義理は無いとでも言うかのような口ぶりだ。
「あらー、あんまり喜ばない趣味か」
そりゃ仕方ねぇな、とグレゴは溜め息をつきながら納得したようだ。
野営地を一周してきたところなのだろう、暗い中でも愛用の剣をまだ腰から外していないのが見えた。

「そういや、お前いくつになったんだ?」
剣の形を再開するために距離を取ろうとしたロンクーに、グレゴは彼を引き止める意味も含めて問いかける。ロンクーは足を止め、しばらく考えるようなそぶりを見せた。
「二十……と、……それ以上は、知らない」
知らない。
正確な年齢を伝えず言いよどむロンクーの態度に、グレゴは首をかしげる。
「知らない、ってお前……」
ロンクーはふるふると頭を振り、本当に知らないという意志を示す。
そんなもんかねー、とグレゴは独り言を零した。
「去年は祝ってもらわなかったのか、親兄弟とか、友達とか、何歳の誕生日おめでとうー、って」
わずかながら、ロンクーの肩がびくりと震えた。
「それは――」

親兄弟と友達、という言葉に気を取られた。
ロンクーは、自身の生誕を祝って貰ったことはない。
そもそも「10の月10の日」という誕生日も、その生まれを考えると正しいのかどうか分からない。
唯一知っているだろう親は顔を覚える前にいなくなった。覚えている限り記憶をさかのぼっても、屋根の無い物陰で剥き出しの刃物を抱えて寒さに耐えている光景が最古で、親の顔は一切出てこなかった。兄弟はいるかどうか知らない。
友達は――友達、は。
誰も知らないはずの、彼の中だけに仕舞われた過去。
その重たい記憶が、引きずり出された勢いのまま一気に脳裏を掠めようとする。
ふ、とロンクーの瞳が揺らいだ。
「あ、」
その翳りに、グレゴが気付く。ぎりっ、と刀を握る手に歪んだ力が入っていることにも。
「あー……もしかして、触れちゃいかん話、だったか」
時折、ロンクーは暗い目をすることがある。例えるなら、何かに怯えている子供、のような。
今この時もそれと同じような色が映っているのだろう。
「すまん。本当にすまん」
予想外に焦った声が届き、ロンクーははっと我に返った。
そっと顔を上げると、グレゴはばつの悪そうな表情をしている。
「グレゴ――」
とっさに名前を呼んだが、それ以降の言葉に詰まる。
己の今の反応で、グレゴが何を悟ったのだろう。
聞こうとしたが、上手く声が繋がらない。
気まずい。
「……いや、構わん。事実だ」
そうして、ようやく口を開く。
誕生日か、年齢を知らないことか、――身寄りのことか。
この中の何が事実なのか、あるいは全て事実なのかは、ロンクーはあえて指摘しなかった。

「あー、その……何だ」
グレゴは複雑な顔で視線を逸らしながら、頭を掻いた。
「詫びに、一個言うこと聞いてやるからさ。誕生日の贈り物代わりにこれってのも何か悪いけどな」
「構わんと言っているだろう」
右手が軋む。ロンクーはようやく、刀を握り締めたままだったことに意識が向いた。
「いやいや、俺がすっきりしねぇんだよ」
「……そうだな……」
食い下がってくるグレゴを見て、ロンクーは刀身を鞘に戻しながらしばらく考え込む。贈り物代わりと言われても。何か無いかねぇ、とグレゴの急かすような声。
「グレゴ」
そこまで言うならと、ロンクーは提案を口にした。
「お前が今持っているものを、一つ寄越せ」
「はあ?」
贈り物、という習慣。
この軍の女性達が、誰かの誕生日に贈り物をしているところはたまに目にしていた。しかし、ロンクー自身がいざ贈られる対象になり、何が欲しいのかと面と向かって聞かれると、普段から必要ない物は持たない方であるし、必要ある物だとしてもどうにかして自分で調達する。
しかし今この場では、何かして貰わなければグレゴは引き下がりそうに無い。ならば、ここでさっさと済ませてしまおうと思ったのだ。
「そんなんで良いのか?」
「無いなら、無くて良い」
「身につけてるったってな……あ?」
予想外にいきなりの要求へ応えようとしても何をくれたものか、と悩んでいたグレゴが、ふと思い出したように顔を上げた。
「ちょっと待ってろ、そういや」
ロンクーを少し待たせる言葉をかけると、上着のポケットにグローブを嵌めたままの手を乱雑に突っ込み、何かを探し始めた。
傭兵をやりながら暮らしているグレゴだが、その人の良さなのか、おおよその依頼は受け入れている。簡単なものであればその場で解決し、依頼金を貰わずに済ませることもあるらしい。今回も、同じようにすぐ済むのだろう。済ませて欲しい。ポケットの中身を探るグレゴの姿を見ながら、ロンクーは何となく思っていた。
「おー、あったあった」
案の定、すぐに目的の物に指が当たったようで、ごそりと手を引き抜いて何かを取り出したようだ。かがり火の明かりの影になり、ロンクーからはそれが何なのかよく見えなかった。
「ほれ、手ぇ出しな」
グレゴが空いた手で手招きをする。
「……食いがらか何かではないだろうな」
ここに来たままにすぐ出せるものなのだから、あまり良いものの期待は出来ない。何を渡されるのか分からず、少し上がっただけのロンクーの手が逡巡するようにその場に留まってしまう。
その様子に焦れたのか、グレゴがさ迷っている手をがしりと掴み、そのまま力強く引き寄せた。ロンクーはバランスを崩しそうになり、グレゴとの距離が一、二歩縮まる。

「ったく、自分から言っておいて……やるよ、これ」
片手でロンクーの手を持ち上げると、両手で握るようにして何かを乗せた。ごつごつとした感触が手袋越しに伝わってくる。これが何なのか、というような視線を向けると、グレゴはにっと笑った。
ロンクーも軍の中では割と背が高いほうだが、彼はそれよりさらに体格に恵まれていた。少しばかり見上げた先の笑顔の意味が良く分からない。
グレゴの手が離れ、思いのほか重みを感じながら、ロンクーはそっと指を開いてみた。ちょうど手のひらに乗るか乗らないくらいの、黒色に近い塊が手の中にあった。
「……石、か?」
傍目には何の変哲も無い、ただの石。
ロンクーは受け取った腕を傾けて、ころりとその石を転がしてみる。裏面は少し脆いようで、今にも欠けそうな箇所が見受けられた。
「ちょーっと前にほら、火山に入ったろ。途中のちょっとした横穴で見つけたんだよ」
グレゴがゆっくりと膝を曲げ、そのまま足元の草むらに腰を下ろす。
「……何のつもりだ」
何かくれとは言ってみたものの、ただ拾った石を渡すとは。
食いがらよりよっぽどましだが、ロンクーが眉をひそめるのも無理はない話だった。
「うわー、やな顔するねぇあんた」
あからさまに不快な顔をされて、グレゴは変な声を上げる。
「まだ話の続きがあんの。明かりにかざしてよく見てみろ、そのひび入ってる奥」
ちかり、と視界の隅に星とは違う光がよぎった。ロンクーが手元に視線を戻すと、その光はグレゴの言ったとおり石の中から届いている。爪の先が辛うじて入りそうな幅しかない亀裂をそっと覗き込むと、材質の違う箇所がかがり火の明かりを反射していた。
「へへっ、最初はそのへんの石ころだと思ったけど、すげえ色だろ」
その石は吸い込まれそうな暗さを持っていた。
純黒かと思いきや、その色を明かりに向けてよく見ると縞の模様が石の中に入っている。
「これは……」
硝子細工のような繊細さに、ロンクーの心の中がさわりと動いた。
「アンナに聞いてみたら、そりゃ宝石なんだと。取り出して磨けば首飾りに使えるらしい。結構な貴重品だと思うぜ、俺はな」
手の中で石の角度を変えると。
「……模様が」
「見る角度によって縞模様が変わるんだ。おもしれぇよな」
わずかではあるが、石の表情が変化した。グレゴの話を聞くのもそこそこに、手元の石の角度を様々に変えたり、月の光に透かそうとしてみたり。
宝石の模様が変わる様子にしばらく耽っていたところで、ロンクーはふと気付く。
「……俺に寄越して良いのか」
まだ磨いていないとはいえ、これは原石である。売れば金の足しにもなるだろう。こんなにあっさりと手放すのか、という意味をこめてロンクーが疑問を投げかけた。
「っつーか、くれっつったのはあんただろうに」
「……む」
それもそうだ、とロンクーは考え直した。再び、手の中の宝石に目を移そうとする。

「んー……実を言うとな」
グレゴが、多少言いにくそうな声を上げる。ふっとその顔を見ると、視線がかち合った。
「太陽の下で見るとそれ、もうちょっと赤く見えるわけよ」
視線を向けながら話すグレゴに気付いたロンクーは、同じようにグレゴの向かいへ腰を下ろした。
「それでな、お前のこと思い出したんだ。何となーく、だけどな」
思いがけず自分について言及され、ロンクーは身じろぐ。
「……俺とこの石、何の関係がある」
グレゴは再度空を見上げる。
先程とは違いどこか遠くに視線が行っているように、ロンクーには思えた。まるで、何かを懐かしんでいるような、それとも、悔いているような――。ロンクーもそれにつられて顔を上げ、空に散りばめられた星々を眺めた。
「お前の髪もな、日の光に当たると、赤みがかって見えるんだよ」
ちらりと視線を移すと、東の空の色が先程よりほんの少し変わっており、地平線が見えた。もうしばらくすれば周りも明るくなり、眩しいほどの朝日が昇ってくるのだろう。
「気付いたのがつい最近だけど、すげえ綺麗な色してんだな」
星空へ掲げるようにしながら、ロンクーはその石をじっと見つめた。掲げた手の向こうにひときわ大きく、赤く輝く星が見える。その傍らにも、橙や緑など、様々な色の星が煌めいていた。
暗闇の中、この宝石は彼が言ったような色をまだ示していない。夜が明け、この星々や月が明るい空へ消えた頃。太陽の光を受ければ、この宝石と自身の髪は同じ色を映すのだろうか。
グレゴが、綺麗だと言った色に。

ふう、とどちらともなく溜め息をつくのが聞こえた。
「ま、加工に出すなり何なり好きにすりゃいいさ」
ずりずりと草を擦る音がする。グレゴが、よいしょ、と年寄りのような声を出しながらロンクーのすぐ隣に座り直した。
「いい一年になるといいな」
改めて、誕生日おめでとさん、ロンクー。
そう付け加えると、グレゴはロンクーの頭を抱き込むように手を置き、がしがしと乱暴に撫でた。先程は気付かなかったが、グレゴはいつの間にかグローブを外していたようだ。時折額や耳に触れる手に、少しではあるが暖かみを感じる。
それに合わせて、じわり、と胸の内が暖かくなるのを感じた。
弟か息子がいれば、きっとこの男はこんな撫で方をするのだろう。
「……ありがとう」
ぼそりと呟いた。
その声は、グレゴの耳にしっかりと届いたようだ。ロンクーの顔を覗き込むと、にやりと笑う。
「何だ何だー、珍しく素直じゃねぇか」
「……うるさい」
「はーいはい」
ふいと顔を背けたが、グレゴはそんなロンクーに構わずぐりぐりと彼の頭を撫で続けた。
ロンクーはこの夜を眠らず明かすことに決めた。ただし、決して眠りを拒もうとする意図ではない。
朝一番の太陽が出るその瞬間が、いつもより少しだけ待ち遠しかったのだ。
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